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2005年3月26日 新潟日報掲載
国の重要文化財指定 萬代橋と景観 <4> まちづくり
岡崎篤行
(新潟まち遺産の会副代表・新潟大学工学部建設学科助教授)


官民挙げた取り組み必要

 旧税関、旧県会議事堂に続き、昨年、萬代橋が新潟市内の建造物として3番目の重要文化財に指定された。萬代橋は、既に水都新潟のシンボルとして市民に定着しているが、今後は、周辺を含めたまちづくりの戦略が求められている。
 新潟のイメージアップのためには、新しい都市開発だけでなく、歴史的な魅力を伝えるまちづくりが必要だ。そのなかで、3つの重要地区があると考える。第1に近世文化を伝える地区として、回船問屋小澤邸などがある下本町界隈、第2に近代洋風文化を伝える地区として、市長公舎、副知事公舎、カトリック教会などがある異人池・西大畑界隈、そして第3に、現代の新潟を象徴する地区としての萬代橋周辺である。萬代橋は、現代新潟の核である古町、万代、新潟駅をつなぐ軸と、りゅーとぴあ、みなとぴあ、朱鷺メッセなどが並ぶ信濃川軸との交差点にあることから、まさに新潟の要といえよう。
 萬代橋は、当初の姿に復元され、橋詰広場も当初のイメージで整備された。しかし、周辺の景観がよくなってこそ、萬代橋の歴史的価値は生かされる。やすらぎ提の整備によって公共機関の質は高まったが、民間所有の宅地の現状はどうだろう。
 ビルの屋上に立てられた広告塔、巨大な壁面広告、統一感のない建築物群などは、萬代橋の背景としてふさわしいものとなっているだろうか。せっかく整備された萬代橋を眺められる屋内外の場所は十分だろうか。萬代橋の周辺は歩いて楽しめるような、にぎわいのある空間になっているだろうか。高層建築が増えていくなか、萬代橋から弥彦、五頭、飯豊などの山々への眺望は守られるのだろうか。
 これらの課題に対応するためには、官民挙げての面的な取り組みが必要である。例えば、広島市のリバーフロント建築物等美観形成協議制度では、川から200メートルの範囲にある建物を調和のとれた形や色彩にするための事前協議を行い、住宅の場合、金融貸し付けの割増を受けられる優遇措置も用意している。金沢市では、重要な眺望点と、そこからの眺望対象となる要素を決定し、開発が眺望に与える影響のシミュレーションなどを要求している。
 新潟市でも都市景観条例による大規模建築物等の事前協議などで、景観の底上げに一定の成果をあげている。今後は、より積極的に良い景観を守り育てる取り組みと、市民に開かれた議論の場の形成が課題だ。
 昨年、画期的といわれる景観法が制定された。今後は、萬代橋周辺を同法に基づく景観計画区域や景観地区に指定することを視野に入れて、市民の合意形成を図っていかなければならない。また、高度地区による高さ規制などの選択肢も検討の必要があろう。そのためのたたき台として、今回、私たち「萬代橋景観フォーラム」が発表した「景観宣言」を活用していただければ幸いである。

 


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