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2012. 1. 24 vol. 16 

第3回・古町花街イベントを開催
 第3回目となった「柳都新潟・古町花街イベント」、今回は「粋に学ぶ大人の花街」と題して、全国の花街の中での古町花街の価値と、花街独特の景観のあり方について考えました。参加者はシンポジウムが約70名、まちあるきが約50名、毎回好評の料亭有明でのお座敷体験が定員いっぱいの40名と、前回を超える盛況でした。
 3年間にわたって行なってきたシンポジウムは今回で一段落しますが、お座敷体験などのイベントは今後も続けていきたいと考えています。
■基調講演 1 『平成・全国花街めぐり?私が魅かれた職業人としての芸者たち』
 講師:浅原須美氏(フリーライター)
 浅原さんは料亭等の取材を通じて芸者の世界を知り、全国約40 箇所の花柳界を取材。芸に生きる者=芸者。その心意気に魅せられ、職業人としての芸者個人に注目して取材を続けています。
 戦後を生きぬき、現在も現役を続ける芸者さんたちから、「芸者にとって芸の大切さ、芸に生きる深い意味があることを感じた」という浅原さん。「生まれ変わっても芸者になりたい」というお姐さんの言葉が沁みます。
 被災した釜石最後の芸者(85歳)と、その芸を受け継がせて欲しい、と避難所の一角で稽古を受ける八王子の芸者の、芸をあいだにした交流のドキュメントは、思わず涙しました。
 「家も何もかも流されましたが、この身につけた芸だけは流されませんでした、どうぞ使ってやってください」と、招かれた東京のイベントで挨拶する姿が本当に美しく、観ている者の心を動かしました。(伊藤頼子)
■基調講演 2 『神楽坂の景観とまちづくり』
 講師:鈴木俊治氏(アーバンデザイナー)
 NPO法人「粋なまちづくり倶楽部」の理事でもある鈴木さんには、「私たちの良いと思えるものはどのように残していけるのか」というテーマのもと、次のようなお話をしていただきました。
 現在の建築基準法や都市計画法などの法律にはまちづくりや文化といった概念がなく、単純に良いと思えるものを残せる体系となっていません。
 今後のまちづくりにはソフトとハードの包括的な取り組みが必要となり、その第一歩として地域を読み解くことが重要です。
 具体的に神楽坂では、ワークショップやアート、祭りなど、地元の方々に地域の一員として関心を持ってもらえるような取り組みを行なっています。
 また、神楽坂でも全国と同様に開発や火災により景観が失われつつありますが、まちづくり憲章や地区計画、粋なまちなみルールといったその地域独自のルールを用いることで、法律にとらわれず柔軟なまちづくりを行なえるように取り組んでいます。(佐藤正宗)
■パネルディスカッション「古町花街らしいまちづくりとは」
 パネリスト:浅原須美氏・鈴木俊治氏・木村めぐみ氏(八王子中町芸者、料亭すず香・置屋ゆき乃恵女将)・行形和滋氏(新潟三業協同組合理事長、行形亭第十一代目主人)・金親顯男氏(ホテルイタリア軒 代表取締役社長)
 パネリストの方々から、古町花街らしいまちづくりに向けて、アドバイスをいただきました。
 浅原さんは「建物が残っているので、大切にしてほしい。若手芸者は先輩芸者から心意気なども学んでほしい」と言われました。
 鈴木さんからは「古町のためではなく新潟全体にとって良いことだと周知するべき」とのお言葉。
 木村さんは「建物も路地も残っていてうらやましい! 残していってほしい」とのこと。
 地元の行形さん、金親さんは「新潟は一見さんお断りの文化はない。遠い世界とは思わずに、色んな人に楽しんでほしい」「湊町にいがたの売りは『おもてなしの心』。湊町らしいまちづくりを進めたい」と応じられました。
 全国的に見ても貴重な、花街が残る新潟。しかし、京都や金沢と比べると守る術がないのが現状です。多くの方に花街の魅力を知ってもらい、共に花街を守っていきたいと感じました。(佐野育実)
シンポジウムの様子。三業会館ホールで。 夜の部のお座敷体験は料亭有明で。


全国路地サミットに参加
 一昨年、新潟で開催された全国路地サミット。昨年は東京の下町、墨田区向島界隈で、10月21日(金)から23日(日)の三日間開催されました。
 「路地と防災」「路地と観光」「路地と世間」がテーマのシンポジウムは、防災、住む人の暮らし・仕事のあり方、訪れる人との繋がりや未来像まで踏み込んだ有意義なものでした。
 まち歩きは、文化・ものづくり・路地・アートを切り口にしたコースから選択、愛情溢れるガイドにより、江戸っ子の「粋と野暮」を知る充実の3日間でした。(伊藤頼子)
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 開催地墨田区の一角、スカイツリーの足下には、有名な花街である向島があります。昨年の路地サミットin Niigata でパネラーとしてお越し頂いた「料亭きよし」の女将、小林綾子さんのご好意で破格のお座敷が開かれました。
 向島では、最初に打楽器が入るのが慣わしだそうで、半玉さんの太鼓とベテランのお姐さんの三味線で、一曲ご披露頂きました。その後、3 人の立方(踊り手の芸者さん)が順に1 曲ずつ踊るという、豪華な宴でした。
 ネットで検索すると、お座敷体験イベントも随時開催されているようですので、皆さんもぜひ一度、お江戸文化をご堪能ください。まちあるきでも、元待合の料亭内部を特別に拝見させて頂きましたが、どこのお座敷も「几帳」がしつらえてあるのが、印象的でした。
 それにしても、空襲で消失しなかった古町の幸運さを、改めて噛みしめました。これを活かさないのは、あまりにももったいないといわざるを得ません。(岡崎篤行)

下町マップはもうすぐ!
 旧小澤邸を中心とする下町(しもまち)エリアの新マップは、現在、全体のレイアウトイメージがまとまり、掲載予定の建物について世話人会で取材を進行中です。表紙には、阿賀野市(旧笹神村)在住の版画家、小林春規氏の版画が入る予定で製作が進んでいます。
 これまでのマップになかなか入らなかった新しいエリア、下町の魅力ある「まち遺産」たちを、初めて訪れる人はもちろん、新潟人にも再発見していただけるようなマップにしたいと思っています。
 春のまち歩きには「下町マップ」を片手に歩いていただけるように頑張りますので、楽しみにお待ちください。(伊藤頼子)

旧齋藤家別邸の改修工事進む

 旧齋藤家別邸は今年の6 月の一般公開に向けて改修工事中です。
 10月30日(日)に開催された旧齋藤家別邸工事見学会に参加してきました。3回開催、各会20名程度で、私は最終会午後3時からの会に参加しました。
 まずは奥座敷の工事現場からで、そこでは壁下地が貫工法に筋交いを併用するといった、当時にしては耐震に留意した点が見受けられました。次に玄関脇水屋が解体によりかつて応接間であったことがわかり、その他生活空間であった座敷、台所が幾度となく改修された事実もわかりました。工事により往時の姿が改めて感じられました。(伊藤純一)

(上)壁に入った筋交い。


県内のまちづくり団体集う
新潟県まちなみネットワーク出雲崎

 毎年、ネットワーク加盟団体の持ち回りで開催しているこの大会ですが、今年度は、昨年11月19日(土)に妻入り町屋で有名な出雲崎で開催されました。シンポジウムに約40名、総会に約15名の参加でした。
 開催地の出雲崎では、国庫補助による街なみ環境整備事業が実施され、北国街道妻入り会館の建設など、整備が進んでいる状況を実感できました。
 来年度の大会は秋に村上で、第2 回全国町並み保存連盟北信越ブロックゼミとの同時開催となります。ぜひご参加ください。(岡崎篤行)
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 大会には所用で出席できなかったので、翌日11月20日午前中のまちあるきに参加しました。前日のまちあるきは賑やかだったようですが、なんとこの日の参加者は私一人。ガイドさんとマンツーマンで、時折激しい雨の降るなか、出雲崎を歩きました。
 海岸沿いの道が昔の海岸線で、町屋の裏がじかに船着き場になっていたことを知り驚き、まさに海に直結した町であったのだと実感しました。妻入りでありながら、吹き抜けがあり、その吹き抜けを挟んだ二階の部屋が廊下でつながる造りは、高田の町屋(こちらは平入り)にも似ていました。
 町屋風の休憩所もでき、十数年前に訪ねたときより歴史に配慮した町並み整備が進んでいることを感じました。楽しい3時間でした。(大倉宏)

火災後の小須戸のまちづくり、模索続く

 小須戸町並み景観まちづくり研究会は2007 年に活動を開始し、徐々に活動の幅を広げてきました。主な活動としては、まち歩きの開催や空き店舗の町屋「薩摩屋」の改修、先進地視察、小・中学校の地域学習のサポート等が挙げられます。
 活動の成果として、まち歩きでの来訪者や地元の子供たちなど、地域内外で町並みの価値が知られ始めているように思います。また、住民間で新潟市の「なじらね協定」を利用した景観整備の準備が進められており、来年度には3棟の商店で町並みに合わせた外観への改装を予定しています。
 一方で、一昨年の大規模火災を受けて、跡地の再生を含めた地域の課題について議論することを目指したワークショップ等の取り組みを進めました。しかし、地元の反応はそれほどなく、跡地を巡る取り組みは停滞しています。
 研究会ではその後も、町並みの火災と復興、防災の事例に関する発表会や、コミ協の防災部会との協議等を行ない、地域の将来と町並みの今後、防災の充実と跡地の復興を繋げて議論すべく、模索してきました。こうした活動の成果か、新潟市では来年度から「小須戸防災まちづくり事業」を行なう計画で、行政が町並みの防災に向け動き始めるようです。
また、来年度は「水と土の芸術祭」も開催され、研究会でもイベントを企画しています。今後、行政や商店街等とより一層の連携を図り、町並みの保全に向けた住民意識の啓発や、防災面の充実に向けて取り組んでいきたいと考えています。(小須戸町並み景観まちづくり研究会・石田高浩)


全国町並みゼミに参加
 全国町並みゼミは、当会も加盟した全国町並み保存連盟のメインイベントで、延べ数百名の参加があります。3 日間の期間中、講演、分科会、現地見学、懇親会、ブロック別会議、分野別会議などが開催され、熱い討論と交流が繰り広げられます。
 今年度(第34 回)は、9月30日から10月2日にかけて、岐阜県飛騨市で開催されました。
 飛騨市は、富山県と岐阜県高山市に挟まれ、古川町、神岡町などが合併してできた市です。
 古川は雲肘木(くもひじき)の付いた新町家や白壁土蔵で有名です。神岡は鉱山町として発展し、大きな遊郭もありました。今回、市に寄贈された貴重な遊郭建築の内部を見ることができました。古町の料亭とは違った間取りで、興味深かったです。昭和40年代までは、花街として残っていたようです。
 来年度の町並みゼミは、6月1日から3日に福岡市で開催予定です。(岡崎篤行)

世話人リレーエッセイ
先人が残したものを守る 澤村明

 横浜にある国指定名勝の三渓園は、御存知の会員も多いと思います。17万5千m2(約5万3千坪、17町歩)の敷地に、重要文化財10棟を含む歴史的建造物が点在した庭園公園です。
 生糸で財をなした原善三郎と原三渓の2代で作られ、1906(明治39)年に公開されました。現在は横浜市に寄贈され、財団法人三渓園保勝会の管理となっています。
 三渓園は春秋の花も有名です。冬はそうした華やかなものは見られませんが、空気が透明で植樹の葉も落ちて、建物を見るのに向いています。20年か30年ぶりに訪れたら、新たに移築された仏殿もあり、可愛い野良猫たちと相まって、寒い中を訪れたかいがありました。
 かつての大富豪が残した文化遺産。最近出版された志村和次郎の『富豪への道と美術コレクション』(ゆまに書房)は、美術品コレクションを中心にその事例を集めています。新潟でも豪農・豪商といわれた人々の残したものをどう守り伝えていくか、三渓園を巡りながら、課題の多さに改めて思いを馳せました。

三渓園ホームページ http://www.sankeien.or.jp/


 赤坂町3丁目の観音堂。縁日には夜店、屋台が並び賑やかでした。堂裏に掲げられた地獄極楽絵図は子どもたちの好奇心と恐怖の的でした。



新潟まち遺産の会事務局
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