2014. 2. 11 vol. 18
遅くなりましたが、平成24(2012)年度の報告をいたします。
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2013年9月28日(土)、29日(日)の両日、第8回新潟県まちなみネットワーク赤泊大会が、佐渡市の赤泊総合文化会館をメイン会場に開催されました。総会は30名ほど、講演は100名ほどの参加者がありました。 基調講演では、京都府立大学教授の大場修先生から、全国、新潟県、赤泊の各レベルで町家の詳しい解説がありました。妻入りが多く混在しており、佐渡では珍しい赤泊ですが、越後と最短距離で、つながりが強い影響かもしれないという仮説が興味深かったです。 北陸地方整備局建政部長の梛野良明さんのセミナーでは、歴史まちづくり法の詳細がわかりました。ハードのみでなく、伝統的な活動があることも認定の要件とのこと。また細かいメニューがいろいろとあるので、詳しく相談する必要があると感じました。文化庁の歴史文化基本構想を作っておくと、その後がスムーズというアドバイスもありました。 各地からの報告では、赤泊2団体、その他の佐渡市内8団体、その他の県内6団体から発表がありました。村上では町屋の外観再生プロジェクトをさらに発展させて、外観のみでなく内部改修も含め上限100万円に拡大するとのことです。 懇親会では、住民の皆さんが、佐渡おけさの原型といわれるハンヤ節などの民俗芸能をご披露くださいました。もちろん、地元北雪のお酒もいろいろいただきました。総じて、たいへん充実した大会でした。 * 来年度は、新潟県のご好意により、県との共催になります。6月7日(土)と8日(日)に直江津で開催予定です。各地の仲間が一同に会する年に一度の貴重な機会ですので、皆さんも是非ご参加ください。(岡崎篤行)
29日(日)にはまちあるきがありました。赤泊には大学時代実習で何度も訪れたことがありますが、いつも海岸沿いの道を通って港と調査地を行き来するだけだったため、歴史的なまちなみがあることに全く気がつかずにいました。 今回の訪問で初めて赤泊のかつてのメインストリートに足を踏み入れ、木の温かみの感じられる建造物が多数残されていることを知り驚きました。 大場先生の基調講演で、佐渡の表玄関である赤泊の家屋には、越後とのつながりを認められるものが多いというお話をうかがいましたが、確かに地元のまちなみを思い起こさせるような、佐渡の景観の中でもとりわけ親しみやすい印象を受けました。 まちあるきでは、普段は見ることのできない住宅の内部まで案内していただきました。拝見したなかでも、吹き抜けと渡り廊下のあるチャノマ空間は、家の中に堂々とした広がりと美しさを創り出してしており、とりわけ心を惹かれました。赤泊の魅力に気づくことのできた2日間でした。(田部彩菜)
2013年の9月14日(土)、中央区西堀9の三業会館ホールに於いて「第5回 柳都新潟・古町イベント 女子だって花街part2」昼の部を開催しました。 午後2時15分、代表大倉宏の挨拶から始まり、引き続き「花街のいろはと古町の取り組み」と題し、最近の古町花街における各団体の活動、とくに古町花街の会の活動などを中心に、新潟大学都市計画研究室の岡崎篤行教授(当会副代表)が報告をしました。 3時からは昨年の花街イベントでも好評を博した「ガールズトーク」、ラジオパーソナリティーの遠藤麻理さんと古町芸妓(柳都さん)の対談が始まりました。今年の柳都さんはキャリアも長くなった「紅子さん」。お座敷でのお客様への対応作法や、女性っぽい所作の披露、印象的なお客様のお話など、遠藤さんの軽快なエスコートで紅子さんの魅力、柳都さんの素顔がかいま見られた対談でした。 休憩を挟んで、4時15分からは京都女子大学現代社会学部教授の西尾久美子先生より「おもてなし産業の伝統と革新〜舞妓さん育成と一見さんお断り〜」と題した講演をいただきました。 京都花街にも、新人育成と催事運営といった、どこの世界とも共通な社会活動があるのですが、長い歴史を守り続けるために継承されてきた、お座敷の世界独特のルールや作法があります。講演ではそれらを紹介いただき、花街文化が今もなお生き続けるエッセンスを学ぶことができました。 締めは共催団体のNPO法人堀割再生まちづくり新潟・代表理事の川上伸一さんより、イベントの感想を含め、今後の古町花街の可能性をお話しいただき、昼の部はお開きとなりました。昼の部の参加者は約50名でした。 引き続き夕の部「ぶらり歩く夕暮れの古町花街」では、花街のまち歩きに約30名が参加し、夜の部「体験!古町芸妓とお座敷遊び」には38名参加して、どちらも盛況のうちに花街イベントは終了しました。 夜の部で行なわれた、市山流家元の市山七十世さんによる解説は、踊りの意味がわかって、より興味がわいたと好評でした。(伊藤純一)
先日、法政大学市ヶ谷キャンパス 55年館、58年館の見学会に参加する機会がありました。 55年館、58年館は、大江宏によって設計された、戦後日本を代表する現代建築です。既に解体された53年館を含め、55、58館も取り壊しが決定していますが、「法政大学55/58年館の再生を望む会」によって、取り壊し中止を求めた活動が2010年からはじまり、見学会・検討会を続ける中で、リノベーション案が提案されています。 当初、この話を聞いたときには、築58年の状況を考えると仕方が無いのではないか、とも思っていましたが、初めて実際に見た55/58年館は、想像以上に竣工当時の施工状態も、その後のメンテナンス状態も良く、前面をガラスとスチールの黒いラインで構成された白と黒の印象的なデザインは外濠の景観の中で美しく保たれていました。 3.11以降、耐震性の問題が最優先事項となりましたが、その一方で、使い捨て文化への疑問と限られた資源を有効に使う生活への気運も高まりました。 優れた建築を、耐震的な検討も無しに簡単に取り壊して良いのか、長い年月を通して、そこを利用する多くの人たちの記憶が蓄積された生きた建築を、その歴史とともに絶ってしまって良いのか。「望む会」は大学側に問いかけています。 会の代表は、(ひとの)意志が建築をつくり、意志が建築を壊していく、と話していました。それは規模の大きな建築も、小さな建築も、同じです。 幸運にも、新潟のいくつかの建築は、取り壊しを免れて、現在は市の観光の中心的役割を担っていますが、このたびの峰村商店のように、惜しまれながら取り壊される建築は後を絶ちません。 残したいという、ひとの意志を支える「仕組み」が欲しい、と切実に思います。
※法政大学55/58年館の再生を望む会HP http://www.55-58saisei.sakura.ne.jp/index.html
前号から1年半ぶりの会報をお届けします。編集担当の個人的な事情のため昨年度は会報を発行できませんでした。申し訳ありません。(千早和子)
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