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2005年9月27日 新潟日報掲載
私の視点

景観壊すビル 公の議論必要

千早和子(編集者)

 ネクスト21の北隣の駐車場に34階建て高さ115メートルの超高層マンションが建設される。125メートルのネクスト21に匹敵する建物である。日経新聞によると優良建築物等整備事業として、市からは約12億円の助成金が出るという。
 ネクスト21は移転した市役所の跡地に建てられたことを思い出したい。平成元年に行われた計画案のコンペでは、県都の中心部にふさわしいシンボル性があるかどうかが、選定の重要な観点のひとつとなったという。市の施設である市民プラザも入っており、半ば公共的な建物といってよい。
 19階にある展望ラウンジは、古町かいわいを中心とした町を四方に見渡せる絶好のスポットだ。展望ラウンジの高さは101メートルである。超高層ビルが建てば、今は佐渡まで見える北側の窓からの眺めは失われるだろう。
 ネクスト21は、高層建築の少ない古町エリアのランドマークとなっている。中心街の周辺を歩いていても見え隠れするし、それ以上に、離れた場所からは特徴的な銀色の三角屋根が際立つ。新幹線からも見えるその姿は、ビッグスワンなどと並んで新潟市の顔ともいえよう。
 どこからでも誰もが目にする風景は街の景観そのものであろう。超高層マンションのデザインは公開されていないが、その高さは中心街の景観を一変させる。懸念するのは、中心街の景観をどういうものにしていくかという議論がないままに、事業が進んでいるようにみえることである。
 中心街の活性化が必要であることは理解しているつもりである。マンションを建設すれば住民を呼び込むこともできるだろう。
 けれども、建物は街の印象を大きく左右する。さらに言えば一度建ってしまえば取り返しがつかない。建ってしまってから、これは何?と言っても建て替えることは不可能である。
 2005年6月には景観法が施行され、景観は市民全員の資産であり、まちづくりの重要な要素であることが法的にも認められた。街を再開発するにしても、ただ新しい建物を建てて店舗や住居を増やすだけではなく、どんな景観をもつ街並みにしていくのかという、根本的な議論と市民の合意が欠かせない時代になっているのではないだろうか。
 もうひとつの懸念は、この事業に12億円近い税金が使われることである。わざわざ税金を出して、ネクスト21からの眺望や中心街の景観を壊すことに手を貸すようなものではないか。
 ネクスト21の隣りに超高層マンションを建てる必然性はあるのだろうか。少なからぬ税金が投入される以上、そのことを公に議論する場があってもいいのでないだろうか。

 


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