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2014年9月25日 新潟日報掲載
花街のいまとこれから〈上〉
岡崎篤行(新潟大学教授)
進む再評価

「純和風空間」継承担う 花街とは、主に芸妓(げいぎ)さんを呼べる料亭などが集積する都市の一画を指します。花柳界と同様に花街柳巷(りゅうこう)という漢語に由来し、はなまちとも読みます。明治以降、娼妓(しょうぎ)の遊郭とは分離されました。戦後まで全国各都市に偏在した花街も、現在では温泉地を除き40カ所程度にまで減少しています。一方、京都や金沢の花街は外国人を含む大勢の観光客でにぎわい、秋田では先月舞妓を復活させました。
 近年、花街の価値が見直されています。京都市は3月、花街文化を「京都をつなぐ無形文化遺産」に選定しました。花街は、路地、建築、工芸品等のハードから、日本料理、日本酒、日本舞踊、純邦楽、和服、日本髪、日本画、華道、茶道、香道、作法などのソフトに至るあらゆる日本文化を包括的に継承しています。いわば最後の純和風空間なのです。さらには、郷土料理、郷土出身作家の作品、新民謡、方言など、地元文化を継承する場でもあります。
 芸妓の職能は、おもてなしと伝統伎芸
(ぎげい)の二つと言われます。お酌するだけでなく、季節やご当地に合わせた舞、礼儀作法、お座敷のしつらえも含めて接遇し、「都をどり」などの日本舞踊公演に出演します。今月13日に周防正行監督の映画「舞妓はレディ」が公開されましたが、舞妓は見習い中の若い芸妓(京都では、げいことよむ)のことです。中学卒業後、住み込みで修練し、自毛の髷を崩さないよう箱枕で休みます。全国各地の芸妓は、祭りや物産展に出演したり、海外の姉妹都市に出張したりするなど、都市のシンボルの役割も果たしています。生活が西洋化した今日、花街は国民を代表して日本文化を守っているのです。
 しかし、実体験が無いままの誤解が多いのも事実です。「敷居が高い」と言われますが、比較的リーズナブルに、かつ「一見
(いちげん)さん」も楽しめる機会も多々用意されています。書籍やネット上の情報も豊富です。最近は、着物などには男性よりむしろ興味のある女性客が増えています。日本文化に憧れた若い女性が、舞妓や芸妓になりたくて全国から集まってきます。一昔前の花街とは状況が異なっていますし、これからも時代に合わせて変わって行くでしょう。
 近年では、以前からの応援団である経済界のみに頼らず、一般市民や行政も含めた地域社会全体で花街を支える仕組みができつつあります。28日に三業会館
(新潟市中央区西堀前通9)で開催される第6回柳都新潟・古町花街イベントでは、京都五花街の一つ、先斗町(ぼんとちょう)のゲストから先進的なまちづくりの取り組みが紹介されます。お気軽にご参加ください。

岡崎篤行(おかざき あつゆき)
新潟大学工学部教授。博士(工学)。専門は都市計画。花街空間研究会代表のほか、全国町並み保存連盟理事、新潟まち遺産の会副代表、古町花街の会副会長を務める。
石畳舗装が完成した東新道
新潟市中央区古町通9
 
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