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2014年9月26日 新潟日報掲載
花街のいまとこれから〈下〉
岡崎篤行(新潟大学教授)
宝を磨く

情報発信と周辺整備を 1655年に現在地に建設された新潟は、来年、町立て360年を迎える歴史ある港町です。大規模な空襲を逸れ、特に下町(しもまち)、西大畑、そして古町花街(かがい)の3地区には、歴史を感じさせる町並みが存在します。
 郊外に「娼妓
(しょうぎ)の町」である遊郭が分離され、近代花街としての「芸妓(げいぎ)の町」、古町が成立したのは明治後半です。昭和初期にかけて今に残る町並みが形成されました。現在でも約3分の1は戦前の建物です。花街を構成する「三業」と呼ばれる料理屋、待合(京都、金沢では茶屋と呼びます)置屋(おきや)の建物がそれぞれ残っています。竹を多用し、細かい造作を凝らした数寄屋が多いのも特徴です。これらを紹介した「古町花街たてものマップ」は、砂丘館などで入手できます。
 花街の多くは戦災で消失しました。戦前の町並みが残る現役花街としては京都、金沢、次いで古町でしょう。しかも、京都、金沢は茶屋の花街ですから「伝統的な料亭の現役花街」としては、古町が全国一と言って間違いなさそうです。
 現在でも、古町は15軒の料亭と26人の芸妓を擁する全国有数の花街です。東京六花街、京都五花街、金沢三茶屋街を含めても10指に入る規模です。特に、敷地2000坪の行形亭
(いきなりや)と木造3階建て、200畳敷大広間の鍋茶屋は全国トップクラスの歴史、規模、格式を誇り、花柳界で知らない人はいません。
 運営面でも古町は充実しています。全国に先駆けて株式会社の置屋を設立し、ほぼ毎年「柳都さん」と呼ばれる高卒の新人芸妓を輩出しています。産休・育休も取れる現代的システムは全国で注目されています。新潟市指定無形文化財の日本舞踊市山流が地元に存在するのも強みです。古町芸妓総出演の舞踊公演「ふるまち新潟をどり」を毎年開催できるのも、全国的に見て恵まれています。
 課題も山積しています。既に着手された伝統技芸の継承や景観整備はさらなる進展が求められます。案内板の設置やネット上の情報発信が不可欠です。公開施設、ランチや喫茶の店、観光案内所や土産物店も必要でしょう。古町花街の会ではこのような機能を持ち、芸妓の舞を身近に鑑賞できる施設として、三業会館の活用を提言しています。28日に同会館で開かれるシンポジウム「花街と景観まちづくり最前線」でも議論したいと思います。市民一体となって新潟の宝、古町花街に磨きをかけたいものです。

 
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