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2012. 7. 20 vol. 17 

第9回総会を開催 併せてセミナー「にいがたの近代建築によせて」も
にいがたの近代建築
―明治・大正・昭和
●●戦前期の建物―
2012年4月21日〜
6月10日
みなとぴあ
新潟市歴史博物館
 5月25日(土)、平成24年度・第9回総会と「新潟まち遺産セミナー2012」を、旧小澤邸の離れ座敷で開催しました。昨年度の事業報告・会計報告、今年度の事業計画案・予算案を承認しました。 参加者は11名でした。
 セミナーは、みなとぴあ新潟市歴史博物館学芸員の小林隆幸氏によるレクチャー「にいがたの近代建築展によせて」と、小林氏と当会の大倉宏代表の対談の二部構成で行ないました。
 レクチャーでは、市内に残された近代建築の数々をスクリーンに映しながら紹介しました。
 市内の近代建築を網羅したデータはまだないそうで、今回は、30年前に刊行された『新版日本近代建築総覧』でリスト化された新潟市内の近代建築61件をもとにお話しされたのですが、現在も残されている建物は十数件に過ぎません。残っている建物もいつ取り壊されても不思議はない状況にあるようで、建物の保存の難しさが浮き彫りになりました。
 対談では、小林氏と大倉代表が建物に興味を持つようになったいきさつの話から始まりました。
 大倉が建物に興味を持ったのは、30代でヨーロッパを訪れたときだったそうです。それまでは、街というものは、上からみると建屋のあるビルの屋上が連なっているものという認識だった。ところがヨーロッパの街は屋根が連なっていて、それが美しく魅力的だった。あらためて日本の街の古い写真をみると、いわゆる「甍(いらか)の波」が連なっていることに気づき、そういう風景を探すようになった。「屋根」との出会いが始まりだったようです。
 大倉はまた、旧新潟市で数多くの近代建築を設計した長谷川龍雄と、長谷川と多くの仕事をした武田組についても再評価をしたいと語りました。
 小林氏は、近代建築が文化遺産であると意識されたのは、そう昔のことではなく、それまでに多くの近代建築が壊されたこと、建物の維持が個人の力には余ること、相続や消防などの法律が保存の難しさの一因になっていることなどにも触れられました。
 最後に、建物は建てられた土地にあり続けることで場所の記憶そのものとなるが、それは建物の持つ芸術的な価値とは別の、大事な価値であることに二人の対談者の意見は一致し、小林氏は今町屋と路地に注目していると発言され、対談を終えました。参加者は25名(会員17名・一般8名)でした。
 その後希望者はみなとぴあまで歩き、開催中の「にいがたの近代建築展」を小林氏の案内で観ました。ポルトカーブドッチでの懇親会には13名が参加して建物談義に花を咲かせました。(千早和子)
離れ座敷でのセミナーの様子

第2回 初心者のための「ふるまち新潟をどり」鑑賞講座
邦楽のいろは??プロに花街の楽しみ方を教わる
■邦楽に親しむ講座を今年も
 「をどり」は花街の芸妓が総出演する日本舞踊や邦楽の公演で、京都祇園甲部の「都をどり」は春の風物詩として有名です。しかし、現代の多くの人にとって、伝統芸能の基礎知識を学ぶ機会は、ほとんどありません。そこで昨年から砂丘館との共催で開始したこの企画ですが、今年は邦楽の回を新たに増やして、全3回(5月16日、27日、6月5日)としました。
 新潟市指定無形文化財である市山流家元の市山七十世さんのほか、邦楽の講師として古町芸妓の福豆世さん、延子さんもご協力くださり、実演を交えての楽しい講座となりました。受講生は定員20名に対し、最大で19名でした。
 ちょっとした勉強で、鑑賞の楽しみが倍増します! 来年も開催予定ですので、ぜひ、ご参加ください。
■古町芸妓が一堂に揃う「新潟をどり」
 本番である「第24回ふるまち新潟をどり」は6月17日(日)にりゅーとぴあ劇場にて、1日2回公演で開催されました。
 第一部は「江戸の風俗舞踊」と題し、月形村発祥の大道芸、角兵衛獅子を題材にした長唄「越後獅子」(初代市山七十郎の振付)から始まり、しゃぼん玉売りを描いた清元「玉屋」と続きました。
 第二部「小唄 十二月」では、四季折々の風情を唄った小唄8曲が披露され、最後に全員で「舟江の里」を踊ってフィナーレとなりました(長唄、清元、小唄については、鑑賞講座でも解説しました)。
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 「新潟をどり」は地元で本格的な日本舞踊を鑑賞できる貴重な場であるとともに、全国に新潟の文化をアピールするチャンスですが、残念ながら、まだ満員には達していません。京都のように、市をあげてのイベントに育てるべく、最近立ち上がった「古町花街の会」などとも協力して、当会としても普及に取り組んで行く予定です。
 毎年、趣向を凝らした演目となっていますので、過去にご覧になったことのある会員の皆様も、ぜひまた足をお運びいただき、お姐さん方の円熟した芸と若い柳都さん達の成長ぶりをご覧ください。(岡崎篤行)
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■参加者からひと言
 昨年に続き今年も「新潟をどり鑑賞講座」を受講し、本番「ふるまち新潟をどり」を鑑賞しました。昨年の、古町花街市山流の歴史と日本舞踊の基本的見方に加えて、今年は邦楽、特に三味線のお話しをうかがうことができ、ますます舞台上に興味が注がれました。
 本番は3階席から鑑賞しましたが、なかなかどうして、舞台全体を上部より見渡すことができとても見やすかったです。オペラグラスはあった方がなおいいですね。舞台終了時に舞台上の芸妓さんから観客席に投げ振る舞われる手ぬぐい(最近は違う物らしいですが)を受け取ることができるのは1階前方席の特権ですから、1階席も魅力です。
 古町芸妓さんたちが一生懸命稽古を積んで発表しているのだから、もっともっと広く市民に知ってもらい観に来てもらいたいものだなあとも感じました。
 3階席は充分空きがあるので、学生や外国人に格安で提供したり、また無料開放する席を作り抽選で観覧希望者に与えるとマスコミで宣伝したり、もっと多くの人へ周知し盛り上げる必要があるのではないかなと思いました。(伊藤純一)

町屋部材の行き先が決まりました
 当会で保管していた旧東厩島町の町屋の解体部材は、「水と大地の芸術祭」で使用することになりました。
 部材は旧万代島水揚げ場に搬入し、「かもめシアター」という劇場の椅子と、飴屋法水+大友良英の作品にかなり使用されました。かもめシアターの客席の後ろには、町屋についての説明パネルをつけることになりました。
 また、ワウ ドキュメントというグループも、使用希望の部材をピックアップしてくれることになっています。作品はどれもメイン会場の旧水揚げ場で見られます。
 残った部材は、大きなものの一部は世話人の伊藤純一が引き取り、あとはものによっては細かく刻んで、これも水と土の芸術祭のプロジェクトですが、現在旧礎保育園でレンガを積んで焼き物の窯を作っているナデガタインスタントパーティーが薪として使用することになりました。(千早和子)
万代島の旧水揚げ場に搬入された解体部材。

10年前の夏 町屋の解体とその後

 夏の気配が徐々に強まってきます。ちょうど10年前、2002年の暑かった夏が思い出されます。
 東厩島町
(ひがしうまやじまちょう)の幅員の狭い道沿いにあった古い家が一軒、その夏に解体されました。
 市民から集められた募金を加えて、数日で無惨に壊されることになっていた家が、8月?9月の1か月半をかけて、丁寧に解体されたのです。明治の町屋であったこの家の保存のために誕生したのが「新潟の町屋を生かす会」でした。
 この生かす会を母体に、2004年に当会が発足します。募金活動の経緯と解体作業の詳細は当会ホームページ「新潟市東厩島町の町屋 調査・解体報告」をご覧下さい。当初の再建計画は中止となり、部材は当会が所有することになりました。
 同じ夏、近くの住吉町では昭和2年竣工の第四銀行住吉町支店の解体工事が同時進行しました。同支店はその後、歴史博物館の敷地に「復原」され、川岸の憩いの場として親しまれています。一方の町屋は、その後期待した「再建」はなかなかかなわず、部材の保管場所も理解ある企業、個人から提供していただいた場所を転々とし、屋外に置かれた時期も長くあり、部材の劣化も進みました。
 昨年、関心を持って下さった方から部材を仔細に見たいと申し出を受け、調査していただきましたが、3分の1程度の部材が使用可能との結果で、再建は難しいと判断を受けました。当会でも当初の姿の再建を断念。世話人会、総会での了承を得て、折から開催準備が進行していた「水と土の芸術祭 2012」で、素材として使用していただくことになりました。
 この10年、新潟市では旧小澤邸、市長公舎、旧日本銀行新潟支店長役宅の保存活用が進展し、旧斎藤家別邸が購入、公開されるなど歴史的建造物に対する市民・行政の見方も変化してきました。そのひとつのきっかけが、この町屋の保存運動だったのではないかと思えます。上記の建物と違い際立って立派ではない時代の標準的な家に価値を感じて、多くの人の気持ちが動いたことに、今考えると実は大きな意味がありました。その再建を10 年間探り続けたことにも。それが実現できなかったこともまた、時代の環境だったとしても。
 町屋に初めて足を踏み入れたのは15年前。閉鎖的な現代住居と対照的な、適度な開放性が住む方の人柄とひとつになっていることに強い印象を受けました。縁あって閉鎖的なお屋敷だった旧日銀の支店長宅に「砂丘館」と通称を付け、その管理活用に関わるようになりましたが、振り返ると、それはお屋敷を町屋のような開放された場に変えようとしてきた試みだったのかもしれないと思いあたり、自分の町屋体験がこのように生きていたのかと気づかされます。
 数日前、その砂丘館でダンス公演があり、その後参加者と座敷で歓談していたら、犬を散歩させる方が木漏れ日の落ちる庭を横切って行きました。庭が「トオリニワ(ドマ)」に見え、ふっと細長い土間に瓦のはずされた屋根から夏の光が差し込んだ、10 年前の町屋の解体現場が思い出されました。(大倉宏)

元世話人の佐藤威さん(現在イタリア在住)が作成した解体部材の再構成画像。

旧齋藤家別邸の公開開始

 新潟市中央区西大畑町の旧齋藤家別邸は、本年6月9日より正式に公開が始まりました。
 2005年6月に当時の所有者、加賀田組が手放し、競売にかけられそうだという情報を得て、保存のための市民運動が起こりました。大倉が保存を求める会の副会長となり、さらに当会で事務局を引き受けて、保存の道を模索してきた経緯は、これまでも会報でお伝えしてきたとおりです。2009年に新潟市が買い取り、その後の調査、耐震補強工事を経て公開に至りました。
 市が買って保存になったから良かった、というものでもありません。利用に市民が参加するべく、市民運動のメンバーが指定管理に加わっています。当会からも世話人の澤村が非常勤の副館長に就任しました。
 オープンから2週間ほどは、平日は100人、休日は200〜300人の来訪者を迎えています。7月からは「水と土の芸術祭2012」の展示も行なわれるほか、さまざまに自主事業も開催しますので、ぜひお立ち寄りください。(澤村明)

※旧齋藤家別邸の公開の概要は以下のとおりです。

住所:新潟市中央区西大畑町576番地
電話:025-210-8350
HP:http://http://saitouke.jp/
開館時間 午前9時30分〜午後6時
(10月1日〜翌年3月31日までは午後5時に閉館)
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は開館し、火曜日に休館)
祝休日の翌日
(この日が土・日にあたった場合は開館し、火曜日に休館)
年末年始
(12月28日〜1月3日まで)
その他、臨時休館あり
入館料 一般 300円
小中学生 100円
(各種割引あり)

2011(平成23)年度決算報告


世話人リレーエッセイ 増え続ける空き家 佐藤正宗

 4月8日付けの朝日新聞の記事によれば、この2年間で31もの自治体が空き家対策条例を制定しているそうです。空き家の増加は建物の老朽化、犯罪の誘発、火災の発生、豪雪による倒壊等のおそれがあることから、緊急の課題として多くの自治体で取り組みが始まっています。
 そもそも、建物が急速に郊外に建てられていく現状に対して、今ある建物をどうするかという問題が後回しにされてきた感は否めません。今回の空き家条例制定への全国的な動きは、この問題がいかに差し迫った状況にあるかということを示しているように感じます。
 もちろん、古くなった建物が周囲に危険を及ぼすようなものであれば、撤去すべきという考えはごく自然なものです。しかし、新しいものに目移りしていくばかりで、これまで自分たちが住んでいた建物のことを顧みず、危険になったら一方的に切り捨てるという姿勢には違和感を感じます。
 フロー型社会からストック型社会への転換が求められている中で、私たちの都市や建物とのつきあい方にも大きな転換が求められているのではないでしょうか?



新潟まち遺産の会事務局
〒951-8066 新潟市中央区東堀前通1-353(伊藤純一アトリエ内)

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