2005. 11. 8 vol. 4
10 月9 日(日)、『新潟の湊と堀と町並み「回船問屋小澤邸」周辺と下町の堀』をテーマにシンポジウムを開催しました。新潟まち遺産の会が昨年以来続けてきた、新潟町建て350 年記念シンポジウムの第3 弾でした。新潟まち遺産の会、堀割再生まちづくり新潟、下本町商店会、新潟商工会議所、新潟市と主催者が多彩になりました。「湊と堀と商家の町だった新潟の町の原点を考えてみたい」という意図に相応しいシンポジウムに約130名の市民が集まりました。 伊東祐之さん(新潟市歴史博物館学芸課長)の基調講演「堀と湊と廻船問屋」、川上伸一さん(堀割再生まちづくり新潟代表)の「下町の堀」と、新潟大学都市計画研究室の「廻船問屋街『上大川前通』の町並み」の二つの報告などのあと、篠田市長も加わってパネルディスカッションが行われました。 印象的な発言を以下に挙げました。 ■小澤瓔子さん 「昔の家を崩したら二度と建てられない 。建物だけでなく先人が残してくれた文化まで失う ことになる」「下町は暮らすに便利なところ、人間関係も優れている。若い人に住み着いてもらいたい」 ■川上伸一さん 「下町の空は広い。人間的なスケールで 町がつくられていることを実感した」「これから先の100 年をどうしていくかを考えていく のが大切なことだろう」 ■高取サト子さん 「ウェルカム下町推進委員会をたちあ げて3 年になる。早川堀を意識していなかったが『堀』を囲むようにメンバーが増えた」 ■長谷川守英さん 「今日、午前中に実施した『しもまち 新潟ウォーク』は今年で11 回目の開催になった。今年は約260 名の参加者だった。下町が元気になる よう努力している」 ■伊東祐之さん 「暮らしている人が町をつくる。新潟は 他人に自分の町を語ることをしなかったが、いま、そ れを語り始めた。社会が変わってきたということだ ろう」 ■篠田昭市長 「政令指定都市を目指している新潟市にと って下町は原点ともいうべき地域だ。地元がやる気 になって動き出せば市としても後押ししやすくなる 。期待している」 中 身の濃いシンポジウムになりました。(皆川袈裟雄)
旧小澤家住宅 ■小澤家は、近世後期(19世紀前期)から新潟町で活躍していた商家です。米穀商から始まり、明治初期には回船問屋を営んでいましたが、やがて運送・倉庫業などで成長し、明治末期には新潟を代表する商家の一つとして広く知られるようになりました。現在ある建物は、思案小路側の主屋などは明治13年の大火の直後に再建され、その他の建物は明治末期に増築されたと考えられています。新潟の町家の典型例であり、明治期の豪商の屋敷構えを今に伝えるものとして貴重です。この住宅は、平成14年に小澤家より新潟市に寄贈されました。
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柏崎だけでなく、沼垂にも沼垂日石の古い煉瓦倉庫が残っています。9 月13 日午後から煉瓦倉庫見学会(外観のみ)を開催し、30 名(水辺の会、グリーンシグマ、新潟大学学生)の参加がありました。 倉庫は大正時代の建物で煉瓦はイギリス積みと呼ばれるものです。見事な建物ですが、石油が染みこんでおり、柏崎と同様に土壌は汚染されているかもしません。海外でも石油精製施設が産業化遺産となっている例は聞いたことがなく、今後この倉庫が取り壊されることがあれば貴重なまち遺産が失われることになるでしょう。
3年前の夏に解体された新潟市東厩島町の町屋の部材が、解体された状態で4 回目の冬を越すことになります。シートはかけていますが、屋外保管で、決して理想的とは言えない状況であり、部材の状態も心配です。市民の貴重な募金で解体された部材をなんとか「再建」という形で生かしたいという思いを持ちながら、まち遺産の会がスタートしてから、次から次と現れる課題に取り組まなくてはならず、時間ばかりが過ぎてしまいました。 そこで、この秋には世話人会では「町屋再生プロジェクトチーム」を作り、具体的な再生案と、その実現の方法を検討していきたいと思います。方向としては「新潟下町に」「なんらかのオープンな拠点施設」として再建する案を、模索したい考えです。ある程度の具体的なプランをもとに、他の市民団体や行政とも意見交換を進めていきたいと思います。(大倉宏)
新潟市西大畑町にある加賀田邸は、大正7年に東堀通7の斎藤家(あの燕喜館の斎藤家)の夏の別邸として建てられました。戦後GHQ に接収された後に加賀田家の所有になったという歴史があります。 行形亭の西隣の敷地には、斜面に沿って大きな庭が作られ、滝川が流れ池に注ぐ風景は都会の別天地として、茶会などで訪れる人の目を驚かせ、その美しさは新潟の趣味人たちの間で語り継がれてきました。 現在のその屋敷と庭園は、加賀田家の手を離れ、その保全が危ぶまれています。当会としても、様々な市民、文化団体と協力して、新潟の貴重な「まち遺産」の保全を求める活動を展開していきたいと考えています。皆様の御協力をお願いします。(大倉宏)
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前号の会報でも紹介されていたので、7月にオープンした砂丘館(新潟市西大畑町・旧日銀支店長宅)へおでかけになった方も多いことと思います。 私もこれまでに企画展やイベントを目当てに何度か訪れていますが、つい先日、座敷を利用した宴会を初めて体験する機会がありました。これが思いのほか心地良かったので、以下ちょっとご報告まで。 去る10 月20 日、西大畑生まれの作家・坂口安吾の生誕日を記念した一連のイベントが開かれ、その夜、砂丘館を会場に交流会が持たれました。 安吾つながりにおける新旧の多彩な顔ぶれが一堂に会すること自体、充分魅力的な集いでありましたが、加えて会場を砂丘館にしたことで、あまたある料理屋を利用するのとはまた趣の異なる新鮮な会合になったと思います。 部屋数はあるものの砂丘館はもともと住宅ですから、宴会利用の際には仕出しを手配したり持ち込んだりと準備から後片付けまでの全部を自分たちで世話しなければならず(これがなかなか大変なわけですけれど)、考えようによっては手間がかかった分、楽しめたような気がします。 と同時に不思議な懐かしさを覚えました。あぁ、これは昔、家でやる事が当たり前だった法事や慶事と同じ騒ぎ事だったということなのかしらん。
当会会員の渡辺馨一郎さんが撮り貯めた貴重な写真からの紹介の、第2 回です。 写真左の建物は旧長岡六十九銀行(北越銀行の前身)新潟支店です。撮影当時は、新潟市役所分庁舎として使われていました。のちに取り壊され、今は新潟市開発公社となっています。 写真右は開発公社ビルです。道路は坂内小路で、手前のたばこ店の建物は変わっていないのがわかります。
毎月第2火曜日6時半から、絵屋または新潟市市民活動支援センター(西堀6 番館ビル3 階)で世話人会を行っています。会の活動のことなどを話し合います。皆様のご参加をお待ちしています。場所と時間は事前にお問い合わせを。
町屋マップは新聞に紹介されたことも手伝って、問い合わせが多く、もうほとんど残っていません。予想を超える反響に製作スタッフの疲れも吹き飛びました。今回紹介できなかったり、新たに教えてもらった町屋もまだまだあり、改訂版を作りたいね、と言い合っています。
新潟まち遺産の会事務局 〒951-8066 新潟市東堀前通1-353(伊藤純一アトリエ内)
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