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2006. 4. 13 vol. 5 

 3月26日日曜日の午後、会員対象の「まち歩き案内人養成講座」が開催されました。
 参加者は世話人を入れて17名。町屋を改装したレストランフーデリックの2階でランチを食べながらスタート。食後のコーヒーを味わいながらまず岡崎篤行(当会副代表)による町屋についてのレクチャーを受けました(写真左)。町屋は町の遺伝子であること、町によって町屋の形態が異なること。新潟の町屋は本来妻入りスタイルが、明治以降表側だけを平入りする「丁字造り」という独特の形が生まれたことなど。
 説明を聞きながら上を見上げると、小屋組をあらわしたフーデリックの屋根裏にくっきり「丁字造り」のフォルムが見えていて、思わず「ほーっ」との声が。新潟町屋の細部にいたるまでの特徴を頭に入れて、まち歩きに入りました。
 コースは小路を縫いながら、古町、西堀、本町などに残る町屋や町屋を改装した店鋪どを見ながら下へと歩みを進めます。
 出発してすぐの新川小路では、高窓付き雨戸の実例を早速発見。なんと戸袋までガラス戸になっている珍しいタイプで、説明する世話人も思わずカメラを向けていました。
 本町5番町にも種々のタイプの町屋が見られました。上大川前通りでは大規模な町屋の高杉邸の美しい屋根を眺め、後半は鍋茶屋通り(写真右)など古町裏の通称新道をゆっくり歩いて、料亭や置屋だった建物を使ったお店を眺めました。
 特に9番町の新道は東堀、西堀側、いずれも多くの歴史的建造物が残り、濃厚な新潟の遺伝子地帯であることを再確認。夜ではなく、もっと昼に観光客を招き寄せる工夫があるといいね、などと話しながら、新堀を南浜通りへ。
 洋風建築の本間医院の前で、洋風が多く観察される西大畑地区のまち歩きマップも近く完成することをお知らせしつつ、東中通り、新津屋小路を通って、予定きっかりの4時に市民活動支援センターに到着しました。雨には降られませんでしたが、風の冷たい午後のまち歩きの後の、センターでの温かいお茶が美味しかったです。
 最後に一同は「まち歩き案内人検定クイズ」10問に挑戦。解答と解説のあと、参加者全員にまち歩きガイド認定証が渡されました。
 昨年発行した町屋マップを活用しての初めてのまち歩き。説明されて初めて気付くことが多かったと参加者からの感想でした。新しいガイドの方々にもご協力いただき、今度は一般向けにも開催できればと思います。(大倉宏)



 杉山道夫氏から当会への寄稿です。事は急を要します。皆さまのご意見やご協力をお願いします。 萬代橋東橋詰のキリンビアホール南側に、19階建てのマンションが近々着工予定です。また、一つ南側のブロックには、24階建てのタワーマンションの建設計画が進行中です。更に、キリンビアホールとその東側の駐車場の跡地にも、高層マンションが建設されるという噂です。
 信濃川、萬代橋、両岸のやすらぎ堤……これらの景観は新潟市民の宝です。今回近隣に高層マンションが建つことになってようやく、これらを守り永く後世に伝えていくこの重要性に気づきました。
 同時に各地で同様の問題が多発していることも知りました。世界遺産である広島市の原爆ドーム間近でのマンション建設は興味深く経緯を見守っています。国立市のマンション景観訴訟は住民敗訴となりましたが、「良好な景観の維持が地域住民らの法的利益に当たる」との法的判断が示されました。東京都は景観法を活かして東京都都市景観条例を改正し、国会議事堂などを地区指定して高度等の制限を明記した条例をこの4月1日より施行しました。環境や景観保全は社会の大きな流れです。
 この新潟市においては、5団体の活躍によって「萬代橋景観宣言」がなされ、景観法を活かして私達がこれからすべきことが既にまとめられていました。
 一方、市役所に何度も足を運びましたが、ともすれば近隣者のエゴとしか受けとめられず、そこで私達は、組織化して広く賛同者の協力や新聞やテレビなどの協力も得て、市民運動として展開していくしかないことを痛感するに至りました。
 建築基準法は遵守すべき最低条件です。景観についても国立市の判決が今後の方向を示唆しています。企業が収益をあげることは何ら恥ずべき行為ではありませんが、法令を遵守することはもとより、最近ますます、社会性、公益性も求められるようになってきています。
 私達は「萬代橋周辺の景観を考える会」を構想し、当初は「東橋詰市民の会」として4月4日に近隣者を中心に発足させました。6つめの団体としてフォーラムに参加し、6団体が一丸となって、最終活動目標である
 ・新潟市都市景観条例の改正
 ・都市景観形成地区あるいは高度地区の地区指定
 ・高さおよび形態・意匠の規制
の実現を夢見ています。皆さまの知恵と協力とを急ぎ切望いたします。
(「萬代橋周辺の景観を考える東橋詰市民の会」代表 杉山道男)

写真上:
現在の萬代橋東橋詰の景観

写真下:
2棟完成後の予想合成写真

左側が19階建てのアーバンプレイス萬代橋、66.66メートル、84戸
右側が24階建てのアデニウム萬代橋タワー、85.24メートル、133戸


 新潟県が寄居町の旧副知事公舎を2005年度にも売却したいと報道されたのは一昨年(2004年)の9月でした。旧副知事公舎は新潟市で最も古い洋館付き住宅であり、ドッペリ坂界隈の景観のシンボルともいうべき建物です。しかし売却されると、経済的な価値があまり見込めない公舎の建物は、十中八九取り壊されてしまいます。
 当会はこの報道をうけて、急遽洋館付き住宅のシンポジウムを開催し、同時に公舎の保存活用を提案した要望書を提出するなど、市民や県への働きかけを行ないました(その経過は会報でもお知らせしてきた通りです)。その結果旧副知事公舎は売却せず民間活用されることとなり、公募により貸出先も決定しました。今年6月からレストランが開業する予定です。
 活用が決まったことは大変喜ばしいことですが、歴史的建造物の保存と活用を両立させるには多くの困難があり、他の活用例でも苦労していると耳にします。当会では今後も活用のあり方を見守っていきたいと考えています。
 また、洋館付き住宅のシンポジウムをきっかけに、下町周辺とは異なる歴史や景観をもつ西大畑界隈の魅力を再発見できたことは、大きな収穫でした。(千早和子)


 当会の会員である南毘沙門町の小林洋士さんの住宅が、今年1月に登録有形文化財になりました。新潟市内(合併前)では24件目です。これは、当会が申請書作成したもので、今回が初めての試みになりました。
 ひときわ目につき、風格ある2階建ての小林邸は昭和13年建造。近年、この一帯で進められている道路拡幅計画による取り壊しを逃れた数少ない往時の趣を残した町屋の一軒です。典型的な町屋ではなく、明治以後の近代和風住宅や屋敷造りなどの影響を受けています。
 今回、当会が活用した登録有形文化財制度は、身近な建物や景観を守り活用するために、1996年(平成8)に創設されました。築50年以上の、住宅や社寺だけでなく、橋やトンネルや工場なども登録できます。
 登録することで、見過ごされてきた古い建物などを、市民が共有する「文化財」として見直すことができます。修理費や相続税などで優遇策もあります。歴史的なものを大切にし、スクラップアンドビルドではない町をつくっていくためには、どんどん活用すべき制度でしょう。
 旧市域では、登録第1号の新津記念館、石山味噌、行形亭、鍋茶屋、大橋屋などのほか、斎藤家住宅(関屋本村)、樋木酒造の酒蔵(内野町)、木揚場教会(礎町)、諸橋家住宅(茗荷谷)などがあります。新市域では、亀田の上水道高架水槽、横越の北方文化博物館(旧伊藤家)があり、近郊では弥彦神社、大河津分水洗堰も登録されています。(千早和子)


 新潟県内に残る町並みの活用や保存を行なっている団体で、情報交換などのためのネットワークをつくることになりました。新潟県庁の支援を受けて、3月8日に準備会を開き、4月25日に瀬波温泉で開催された観光カリスマ会議の席上で、当会も含めて集まった約20団体で,ネットワーク発会が宣言されました。
 6月には上越市で第3回新潟町並みシンポジウムが開催される予定で,その際に改めてネットワークについても紹介されることになりそうです。(澤村明)


まち遺産マップ
異人池・ドッペリ坂界隈

 町屋マップの予想を超える反響に気をよくしたから、というわけではありませんが、まち遺産マップシリーズ第2弾として、「異人池・ドッペリ坂界隈」マップを作成中です。西大畑とその周辺に多い「洋館付き住宅」などの洋風建築を中心に紹介した地図で、散策ルートもついています。
 先日は、旭町の諏訪神社の宮司でもある登石さんにお話をうかがいにいきました。寄居村の成り立ちから始めて、西堀通りより海側の地域にまつわるお話を聞くことができました。
 住宅地・学校地区のこの界隈は、用事がなければ足を踏み入れる機会が少ないかもしれません。だからといって、ここが「ただの住宅地」だと思うのは大間違い。マップは歴史のあるこの町の魅力を満載し、湊町新潟とは違う、もう一つの新潟の顔を紹介します。
 ゴールデンウィークまでには完成します。別紙でもご案内している総会では、出来たてのマップを使ったまち歩きも開催します。ご期待ください。(千早和子)


『歴史的遺産の保存・活用とまちづくり改訂版』
大河直躬・三舩康道編著
学芸出版社刊
A5版・280頁(カラー16頁)定価3675円

建物を保存・活用するための手引き書です。保存のための法制度や、日米での実践例のほか、町屋や茅葺の再生・NPOの活動など、最近の動向も解説しています。建物を保存活用する意味や、具体的な方法が理解できます。1997年に出版されたものの改訂版。
 岡崎副代表が「これからの都市計画と歴史的遺産の保存・再生」の節を担当執筆しています。なお、詳細は同社ホームページで紹介されています。


 

今回は萬代橋西詰の写真です。上2枚は内藤旅館、左はそれより橋側にあった萬代橋ホテルです。
(写真提供・渡辺馨一郎氏)


 

 まち遺産の会では,世話人会などのたびにさまざまなアイデアが出ては沈みます。その実現しないアイデアのなかで「なんとかしたいね」といっている一つが,「会員が『これこそ新潟のまち遺産』というものを選んで顕彰しないか」というイベントです。
 世間によくある「読者が選ぶ○○大賞」のようなものです。会員から推薦や投票してもらって,多くの人が認める建物やオブジェなどを「○○年度新潟まち遺産大賞」とか「新潟まち遺産の会会長賞」などと銘打って標識かなにかを所有者に差し上げちゃう……というような催しです。
 ところが,考えてみると実現には課題が山積みどころか連山をなしています。候補の選びかたは,スケジュールは,原資は,それにそもそも所有者が喜んで受けてくれるのか。
 しかし,当会のような活動をやっていて感じるのは,当会の会員さんが感じているような「あの建物は素敵」という感動を,必ずしも所有者は知っていないどころか「ボロ家は早く建て替えたい」と思っているというギャップです。
 ですから,ありがた迷惑かもしれませんが,「こんなに多くの人たちが良いものだと思っているのですよ」という事実を伝えられる縁になるのではないでしょうか。
 実現に向けて,会員の皆さんのお知恵をお寄せください。(澤村明)


近江八景や金沢八景などの名前は聞いたことがあるかと思いますが、新潟にも新潟八景があります。1698年(元禄11)に俳人の片山助叟と雪松老山が選んだものです

船江晴嵐 青柳の市にうなつく舟江哉
沼垂夜雨 おほろ夜や網子のしら声雨よそひ
佐渡夕照 夕立の跡に島あり日の居り
弥彦秋月 ものなくて鵜の超え弱し峯の月
洲崎帰帆 国人の舟の名をさす涼哉
飯豊暮雪 飯豊山雀くらがり雪あかり
寺院晩鐘 寺々の鐘ちからなや夕時雨
寄居落雁 唐土のあたりのまゝか眠雁

 当会で保管している明治の町屋の解体部材のことはたびたびお知らせしていきていますが、先日、この町屋を再生して新潟下町情報センターとする案をまとめました。坪庭を含む表側の5室は町屋の姿を復原します。奥は広い多目的スペースとし、天井を吹き抜けにして杉材の小屋組を見せるという構想です。
 まだ、再建のごく基本的な提案の段階で、皆さんの意見を集め、具体化への筋道をつけていくのはこれからです。次号で詳しく報告する予定です。
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 世話人会には時々レギュラー以外の方がいらっしゃいます。会員の皆さまも気軽にご参加ください。毎月第2火曜日6時半から、新潟市市民活動支援センターまたは砂丘館で、行なっています。時々変更されますので、場所と日時は事前にお問い合わせください。

 
■ 会報バックナンバー ・・・vol. 1 / vol.2 / vol.3 / vol.4


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