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2007. 7. 10 vol. 8 

 6月23日(土)、砂丘館において年次総会のあと、当会世話人である長谷川順一さんを講師に「建物と暮らしを解体から救え!・新潟県中越地震被災住宅修復支援活動の二年・」と題し、レクチャーを行ないました。
 レクチャーでは、昔ながらの伝統工法は地震に弱くないといった基本的な話や多くの建物が解体されてしまう理由と、それに対し長谷川さんがどのような活動を行ない、被災建物の修復を行なってきたか話を伺いました。
 伝統工法は地震の揺れを建物自体が吸収することにより地震に耐えるため、地震には弱くないが、震災後に行なわれる応急危険度判定や罹災証明の全壊が建物を壊さなきゃならないと誤認されているため、被災者の方が全壊と判定されると建物を解体してしまうという実態があるそうです。
 長谷川さんは中越地震後、上記のような誤解を解き、被災した住宅の修復を進めるため、被災地で修復の説明会や地元大工への支援を行ない、修復へのコーディネーターとして活動してきました。修復する際も状況に応じ様々な方法があることを、実際に修復した例をもとに説明していただきました。
 修復を行なうメリットとして、@もとの生活に早く戻れる、A精神的な負担が少ない、B経済的負担が新築に比べ半分程度、Cコミュニティの分断を防ぐ、ということが挙げられました。
 地震はいつ発生するかわからないものですが、地震発生前に伝統工法は地震に弱くなく、修復にはメリットがあるということを多くの人が知っていることで、地震発生後の解体を少しでも減らせるのではないでしょうか。(渡辺篤史)


 2004年に発足した新潟まち遺産の会も3 周年を迎え、4年目の活動に入りました。
 こうしている間にも、町中の古い建物は次々姿を消していきます。つい最近では新潟市東中通の中程にあり、通りのランドマークにもなっていた「やまと生命」の建物が解体されました。鉄筋コンクリート(RC)建築と思っておられる方が多かったようですが、戦争中の建設だったためRC で設計されたものの、実際は木造で施工されたユニークな建物でした。
 こわされる時はあっという間です。建物には所有者があり、所有者には様々な事情があるわけですが、建物を所有するとはそれを私有するということのほかに、なんらかの文化的遺産(という共有物)を自分が託され預かっているいう意識が所有者一人一人に芽生えて来なければ、古い建物の取り壊しはなかなか減っていかないだろうと思います。
 用済みになった古い建物が新たな活用で甦るという試みを、一方で増やしていくことも重要です。当会では10月21日(日)に、会が登録文化財申請のお手伝いをした聖籠町二宮邸の米蔵を劇場空間として活用し、堀川久子舞踏公演を開催する予定です。ぜひお越し下さい。(大倉宏)


 4月14日(土)に、特定非営利活動法人全国町並み保存連盟の理事会が砂丘館で開催されました。全国のリーダーに新潟をアピールし、先進地の事例を学ぶ機会になればと、当会でお世話をさせて頂くことになったものです。理事会に続き、下町・西大畑の見学会を開催しました。皆さん、新潟に多くの歴史的建造物が残されていることに驚いていました。夜は古町の割烹有明で、芸妓の舞付きの懇親会を催し、柳都の文化に触れて頂きました。
 翌15日(日)は新潟市歴史博物館で、シンポジウム「町家再生の最前線」を開催し、連盟理事の皆さんを含め、約60 名の参加がありました。はじめに、町家再生のトップランナーであるNPO 法人京町家再生研究会の理事長を務める大谷孝彦・武庫川女子大学教授から、「京町家再生における市民活動システム」と題する基調講演がありました。続いて、大谷氏、伊勢河崎、京都でそれぞれ活躍中の連盟理事のお二方、そして当会代表の大倉氏も加わって、パネルディスカッション「全国各地の事例から学ぶ新潟町屋の再生手法」を行いました。「新潟町屋の構造も詳しく研究してはどうか」「新潟ではなぜ町家でなく町屋なのか」「路地と町家はセットである」など、議論は尽きませんでした。「是非、連盟に加盟を」とのお誘いも頂き、今後検討することにしています。
 なお、連盟が主催する「第30 回全国町並みゼミ伊勢大会」が下記のとおり開催されます。詳細は連盟事務局(TEL.03-3595-0731)にお問い合わせください。(岡崎篤行)

開催日:平成19 年9月14日(金)〜16日(日)
開催地:三重県伊勢市
大会テーマ:「伝えよう心とかたちのまちなみ文化」
プログラム:1 日目 基調講演・各地の報告など
      2 日目 町並み見学・分科会など
      3 日目 パネルディスカッションなど

⇒全国町並み保存連盟のホームページはこちら
http://www1.odn.ne.jp/~cah24160/matinami.index.html


 全国町並み保存連盟の理事の徳田和子さんから、4 月14日のまちあるきの感想をお寄せいただきました。徳田さんは、旧東海道を中心にして有松(名古屋市)とその周辺地域でまちづくり活動を行なっている有松まち普請の会の代表者です。

 全国町並み保存連盟の第20 回村上ゼミを終えて、新潟に下車、ホテルに荷物を預け、まっすぐ訪ねた会津八一記念館。1997 年(平成9)5 月25 日の午後も2 時であった。その日の総勢7 名のグループは、現在も一緒に、「まち普請」の会で活動をしている面々である。それは文学を訪ねる新潟であった。その前年の平成8 年11 月、芭蕉の直筆といわれる野波本(やばぼん)が発見されていた。記念館で時間が過ぎ、次に防風林である松林に添って、八一・芭蕉・安吾と護国神社に向かった。神社の次は、晩年の10 年間を過ごした八一の寓居を訪ね、ふるさとの地で充実した日々を過ごした八一をしのんだ。
 「ふるさとは語ることなし」安吾、「山河慟哭」の八一、この書の感動は今だ私の中で消えてはいない。これが、一度目の新潟であった。
 あれから10 年、この4月14・15日の2 日間は、全国町並み保存連盟の理事会とシンポジウム「町家再生の最前線」に出席の新潟であった。理事会を終えて、まち歩きにご案内いただいた頃には、冷たい風と小雨の北のまちを身に受けた。町なかの桜の花は満開、つめたい雨、その中をドキッとした地獄極楽小路、突然現れた新潟カトリック教会、旧小澤邸、古町界隈。冷たい雨もご案内いただいた皆さまの温もりで楽しさいっぱいのまち歩きは続いた。二戸建長屋、路地、もったいない路地の中の空き家、商店街と生業を共生されていて市(いち)が毎日立っているのも発見であった。
 信濃川にかかる萬代橋・柳都大橋を渡って、日本海の砂丘へのまち、湊町のモダンが風情を醸し、戦災を免れた政令指定都市・新潟は歴史を実感できるまちです。「新潟まち有りき」、「新潟粋ありき」、酒処新潟の粋な文化、その中に2 日間をありがとうございました。新潟ではち切れんばかりに充電されて帰った私は、幾枚も撮った写真を、まち普請の勉強会のパワーポイントで、新潟を熱く語れる日を楽しみにしております。
 「新潟まち遺産の会」の皆さまのお心こもったおもてなし、ありがとうございました。これぞ21 世紀最高の観光ではないでしょうか。
 全国町並み保存連盟の第30 回ゼミは、三重県伊勢市で9月14日・15日・16日に開催されます。ぜひお仲間で、語り合い、学び合い、励まし合える日をお待ち申しております。またお帰りには、「東海道の街道文化有りき」の有松をお訪ねいただけますよう、お待ち申しております。ありがとうございました。(徳田和子 有松まち普請の会会長・NPO 法人全国町並み保存連盟理事)


 当会は、5月11、12、13日、恒例となりつつある「旧・小澤邸の見学会」に乗じて、模擬店を出しました。風が少々吹いていましたが、天気もまぁまぁ良く、旧・新潟町界隈のことに関心を持つ来店者が多かったからでしょうが、「まち遺産マップ 異人池・ドッペリ坂界隈」は10 部以上も売れてしまいました。去年と比較して、訪れた方々の年齢層にも変化があり(中年層の方々が多かった)、大変結構な三日間でした。(佐藤威)


 6月23日(土)、砂丘館で2007 年度の総会を行ない、参加した16 名の会員によって承認されました。決算報告・来年度予算は下記のとおりです(2006 年度事業報告は省略)。


2006 年度決算報告
収入の部
支出の部
会費    479,000
寄附金   057,050
雑収入   001,940
事業収入  134,360
助成金   100,000
利息    084,120




会議費     049,025
会場使用料   008,100
外注費     179,012
会報作成費   004,500
交通費     000,600
広報制作費   009,450
仕入れ     016,500
消耗品     056,285
資料作成費   015,080
賃借料     005,995
通信費     097,005
払込手数料   017,040
謝金      050,000


収入小計   772,470
前年度より繰越   189,051
今年度支出小計    508,592
来年度への繰越    452,929


収入合計   961,521 支出合計   961,521




2007 年度予算
収入予定
支出予定
会費    479,000
寄附金   050,000
事業収入  130,000
委嘱費  1,560,000
会議費     050,000
外注費     300,000
会報作成費   006,000
広報制作費   010,000
仕入れ     015,000
消耗品     050,000
資料作成費   015,000
賃借料     015,000
通信費     100,000
振込手数料   018,000
謝金      050,000
予備費     020,000
委嘱事業実施 1,560,000


収入予定小計  2,219,000
前年度より繰越    452,929
支出予定小計   2,209,000
来年度への繰越    462,929


収入合計  2,671,929 支出合計   2,671,929

2007年度事業計画は以下のとおりです
◇シンポジウム・イベント等の開催
  4.15.(日)「町家再生の最前線」
  6.23.(土)レクチャー「建物と暮らしを解体から救え!」
   10.21.(日)テーマは歴史的建造物の活用
  同日、二宮家にて堀川久子さんの舞踏イベントを開催
                  (文化庁委嘱事業)
◇要望と提案
  加賀田邸:引き続き庭園、建物の保存活用を要望する運動を行なう
◇まち歩きの開催
  4.27.(土) 全国町並み保存連盟理事会後のまち歩き 
  秋     西大畑下町のまち歩き
◇新潟町屋解体部材
  正式に新潟市に対して部材の寄贈申し入れを行う
  保管場所の移動を行う
  部材を活用した下町情報館建築の実現に向けて関係各所に働きかけ
◇マップに関して
  町屋マップの改訂(有料化)
◇他市他団体への協力と参加
  全国町並み保存連盟への参加を検討
  新潟県まちなみネットワークへの参加
  早川堀通り周辺まちづくりを考える会 勉強会に参加 
  下町ウォークに参加、協力
  全国まちなみゼミin 伊勢に参加など
◇その他
  全国町屋再生交流会(京都市・12 月1日(土)〜2日(日))
  への参加を含む京町家見学ツアーの企画開催
◆世話人の紹介◆
 世話人に入れ替わりがあり、全15名となりました。
新世話人 加藤健一、田中洋人、渡辺篤史
世話人(継続) 伊藤純一、大倉宏、岡崎篤行、佐藤威、澤村明、高橋照子、高橋智之、千早和子、長谷川順一、皆川袈裟雄、武藏靖之、山田貴一

今年度の催し

 10月21日(日)、聖籠町の二宮邸にある2 棟の米蔵を中心に、堀川久子さんの舞踏と音楽のパフォーマンスを行ないます。新潟の町中や野原など劇場ではない場所で踊る「路地」シリーズなどを展開してきた堀川さん。その踊りは土地や建物に埋もれている過ぎ去った時の気配をすくい上げ、わたしたちが触れることのできるものにしてくれる力があります。
 この公演は文化庁の委嘱事業として行ないます。


 2年前に作成し好評だった「にいがた町屋マップ」。その後新たに開店した町屋店舗などを盛り込み、リニューアルして再発行します。
 再発行にあわせて、秋に町屋をめぐる「まちあるき」を開催します。世話人会では今から見どころのあるまちあるきのアイデアがいくつも出ています。これもお楽しみに。



 6月30 日(土)に長岡で、新潟県まちなみネットワークの総会とシンポジウムが開催され、世話人7名が参加しました。ネットワークに参加している県内のまちづくり団体が30集まり、うち半数ほどの団体が活動報告を行ないました。続いて、古い建物を活かしたまちづくり活動の先駆のひとつ、会津若松の「会津復古会」の草創者である五十嵐大祐さんが、まちづくり活動への情熱を語りました。 
 総会に先立ち、NPO 法人醸造の町摂田屋町おこしの会の案内で摂田屋のまちあるきがありました。旧長岡市の中でも摂田屋は戦災を免れ、古い町並みが残された地区です。この日は旧三国街道沿いの醸造業の集まった界隈をボランティア・ガイドの方に案内してもらいました。
 往時の道しるべとなっていたという辻地蔵の前から、古いたたずまいを残す旧三国街道に入ると、醤油の香りが鼻をくすぐり、さらに進むと今度は酒の香りが漂ってきます。醤油工場の周辺は壁などが黒ずんでいますが、これは醤油の麹が染みついたのだという話が印象的でした。
 ひときわ目立つのが、サフラン酒本舗の蔵の戸を飾る十数枚の色鮮やかな鏝絵(こてえ)。土蔵の壁などに、着色した漆喰で浮き彫りをほどこしたもので、ここの鏝絵はどこかなまめかしいのです。
 ガイドの方はここの鏝絵は石川雲蝶に影響されているのではと推測していましたが、同感でした。雲蝶は越後で活躍した幕末の彫刻師で、その極彩色の彫刻は、魚沼(旧小出町)の円福寺・西福寺開山堂・永林寺でみることができます。(千早和子)

正面の建物は味噌醤油製造の「越のむらさき」の工場。左手前の建物は明治期に建てられた。鳥居は竹駒稲荷。その左奥に旧三国街道がのびている。


 

 先日の講演のテーマとさせていただいた中越地震被災住宅の修復支援。実はどこのまちづくりにも深く関連することがらである。
 被災した建物の修復という活動を被災地でしていると、たまたま災害に遭ったから「残すの、壊すの」とやっているけれど、これは住民も地域出身者も平時よりゆったりとした時の流れで、考えていることの結果でもある。それがこの被災という現実によって、雪崩を打つがごとく[出る、戻る]の判断を迫られているに過ぎない。建物の平均更新期間を30 年、震災による更地化が半年とすると、実に60倍ものスピードですすむ町や集落の変化がそこに起こるのだ。
 日頃よりそこに暮らす人と、そうでない人に、いかに日頃より建築に関する理解を深めてもらうか。町並みの保全の鍵は、平凡な日々の暮らしの連続の中で、いかにそういった刺激を与えるかにある。
 中越では壊された民家も、残された民家もまだら模様ではあるが、外部から建築に秘められた先達の知恵と手技のあとなど、その価値をグンと住民に伝えることで残るものは残った。その視点から、もう一度、新潟の町並み保全と、活用を訴える方法を考えなおしてみるのも良いのかもしれない。(長谷川順一)


上は西湊町通一の丁にあった天理教教会。老朽化のため解体作業に入る人が写っている。跡地は長らく駐車場として使用された後マンションに。左は2000年の撮影。


 半年ぶりに8 号をお届けします。今年の総会も無事終了し、世話人一同気持ちを新たにしているところです。
 3 面でお知らせしたように、今年度もさまざまな催しを計画しています。会員の皆さまには、今年度も応援してくださいますようお願い申し上げます。
 話変わって、週間漫画ゴラクという雑誌に「柳都物語」という新潟を舞台にしたマンガが連載されているのをご存知でしょうか。ある料亭をめぐって三代にわたる女性たちを描く作品ということです。新潟の町がどう描かれるのか気になります。(千早)


 
■ 会報バックナンバー
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